「みんなに会うのはいいが、一体、どこに向かえば会えるかのう。まぁ、考えてもしかたねぇ。とりあえず、出掛けてみるべ。」
そう、たんすどんは、心のなかでつぶやきながら、とりあえず、気の向くまま歩いてみることにしたそうな。
「まぁ、そのうち、なんとかなるべ。それにしても、こう、重くては、あるくのもたいへんじゃわい。ふー」
たんすどんはその重い体を、前後左右に揺さぶりながら歩きだしたました。
「ふん、さすがにくたびれるのぅ。」
たんすどんの、呑気さとは、裏腹に、道行く人は大騒ぎです。
「おぃみろ、でっかいたんすがあるいとるぞ。まぁ、不思議なこともあるもんじゃ。」
「わしは、長いこと生きとるが、たんすが歩いとるのを見たのは初めてじゃ。長生きはしてみるもんじゃのぅ」
「わーい!たんすどんが、歩いとるぞ。みんな、こっちにきてみろや。」
みな、大騒ぎ。
当のたんすどんは、そんなことお構いなしです。
「人はみな、おもしろいのぅ。思うたことを、それぞれみな、口にしていきよるわい。」
あっという間に、たんすどんの周りには、人が沢山。そのなかの一人が、たんすどんに、話し掛けました。
「やい、たんすやい。おまえさん、そんなでっかい体引きずってどこに行こうてんだぃ。」
たんすどんは答えました。
「実はおら、今までのご主人皆にあって、この、閉まっちょる引き出しを開けてもらいたいんじゃ。体が重くてかなわんのじゃ。」
「そりゃ、可愛そうじゃの。ちょっと、待っちょれや。わし、その辺り回って、聞いてきてやるで。」
「そりゃたすかるのぅ。ちょうど、疲れたとおもっちょったとこじゃ。」
「任しとけ!じき、ご主人を見つけてきてやる。」
そういって、たんすどんに、話し掛けた男は駆けていきました。
つづくのか?